『老人の執念』
北海道の大雪山系を北に外れると、最北の稚内までの間で唯一の1500mを超える山の天塩岳、北海道
で石狩川に次いで長い天塩川の源流に有る盟主で有る。
我々3人の山仲間は、札幌を19時に発ち23時に登山口に到着しテント泊。翌日、朝食の準備をしてい
ると1台のタクシーが来て3人の客を降ろし引き返して行った。3人の客は特に登山装備も無く、営林署か
自治体の方が見回りにでも来たのだろうと見送り、食事を済ませて我々も出発。
今日は源流帯を一周するコースを取り、初めに前天塩岳に登り源流域の尾根を循環して天塩岳本峰から下
山するコースを取る事にしている。天候は晴れ無風快晴で気温も20度以下、順調に前天塩に到着して休憩
後に本峰に向かった。天塩岳直下の花畑を通過すると立派な大理石の頂上標識が迎えてくれた。
誰とも会わない静かな山旅だと思っていたら新道コースから登山者が上って来た。タクシーで来た三人組
で有る。二人の男女は60代、もう一人の女性は今年80歳になるそうだ。今回が天塩岳3回目の挑戦で漸
く念願が叶い登頂したと言う。
サポート役の60代組より80歳女性の方が元気なようだ。聞くと静岡県の方で,空路旭川に入り上川の愛
別温泉に泊まり、今朝タクシーで山に入ったとの事。凍らせたミカンと水を上げると喜んで頂いたくれた。
帰りのタクシーを待たせる訳には行かないと、20分程の休憩後に深々と頭を下げて降りて行った。私達は、
あのお婆ちゃんが、なぜ日本の北の外れの交通不便な山に執念を燃やしたのか、傍に南アルプスと言う岳人
憧れの山々が有ると言うのに、贅沢な選択だなとの意見で一致はしたが、解らない。
天塩岳
日帰り登山概要
歩行時間 6時間
歩行距離 13㎞
標高差 登り下り共
1100m
体力度 ★★
危険度 ★★
展望度 ★★★
行程
天塩岳ヒュッテ
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旧道側連絡路分岐
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新道側連絡路分岐
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西天塩岳ヒュッテ
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天塩岳山頂
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前天塩岳
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旧道分岐
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旧道側連絡路分岐
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天塩岳ヒュッテ
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